《対位法の基礎》

与えられた定旋律cantus firmus (CF)にそれを分割する方法で対位を付ける。

すなわちシンプルな全音符を1とし、1:1では全音符対全音符、1:2では全音符対2分音符というように行う。C.F.に付けられるものは、対旋律contra punct (CP)と呼ぶ。

旋律のリズムについては、現段階では、極めて単純なものから順次、複雑なものに発展して学習をしていく。

【音域】

ここで作られる音楽は、声楽(混声合唱)のためのものである。よって最終的目標は四声の楽曲であり、声部はソプラノ、アルト、テナー、バスからなる。そして、それらの音域内の旋律が書かれなければならない。(譜例1)

基本的な声部の音域

  [譜例1] 

【音程】(同時になる響き)

協和

完全1度(同度、ユニゾン)、完全8度(オクターブ)、完全5度、長短3度、長短6度、および上記の複音程(+オクターブ)は協和音程である。なお、完全1度、8度、5度を完全協和とよぶ。

  [譜例2]

不協和

増1度(半音、=短2度)、長短2度、長短7度、4度*、増4度(減5度)および上記の複音程(+オクターブ)は不協和で「濁る」音程である。

*4度はある条件(3声以上の上2声)のもとで協和音程になる。

 

  [譜例3]

 原則:音程はオクターブを加えられても、そのもとの協和、不協和の性質は変わらない。

【旋律線】旋律:美しい旋律線の形成を行う。

<避けるべき旋律線>

1)長短7度、複音程、増音程(増1度をのぞく)、特にトリトン(3全音、増4度、トリトヌス、トライトーンなどとも呼ばれる)。減音程、例えば、トリトンの転回形である減5度は乱用は避けるべきだが使用できるし、増2度の転回形である減7度も使用できる。しかし半音階を感じさせる減3度や短調で導音に上方から到達する時に起こる減4度などは注意を要する。背後の和声から引き出されたものは、使用されうる(ナポリの和音など)が初歩の段階では避ける。

 しかし、その一方、短調で臨時記号で半音上げられた導音にその下方からジャンプ(跳躍)して到ることは避ける。上方から導音にジャンプしていたることは問題ない。


注:シェーベルクは減音程も使用を制限している。以下、説明で使われる音符は2分音符で表記されるが、全ての音価(音の長さ)において考慮されなければならない、すなわち、全音符の場合もあるし、4分音符の場合にも該当する。


以下、2分音符で表記されるが、全ての音価(音の長さ)において考慮されなければならない、すなわち、全音符の場合もあるし、4分音符の場合にも該当する。

   [譜例4]

2)トリトンはそれが明確に聞こえる形では用いない。その間に1音入っても用い得ない(複合トリトン)ほうがいいであろう[1]。「トリトンが聞こえる」形とは、旋律の起伏のそれぞれの最低音と最高音がトリトンで形成され場合などで、旋律の音階の途中で使われる場合は、明確に聞こえないし、それほど「耳障り」ではないだろう。

   [譜例5]

注[1] トリトンを構成する音程の間に1音が入る場合、それがこのあとに記されている旋律の部分的最低音と最高音の間で起こる場合でなく、いかなる部分でも注意して用いる必要があるだろう。

3)本位音(その調性の本来の音)だけを使う。半音階は使わない。ただし短調における上行する導音(ソ#)、及び導音に至る第6度音(ファ#)は固有音(本位音)とみなされる。短調の旋律は、いわゆる「旋律(的)短音階」(導音<ソ#>と准導音<ファ#>は上行変位)が使用されるが、途中で、自然短音階の使用も許される。しかし、終止はかならず、旋律短音階にする。また本位音とその変位音を連続的に使用して、半音階を作ってはならない。

4)6度の跳躍は、旋法対位法[2]では、極めて限定的に使用されてきたが、この様式では、躊躇なく用いてよい。しかし長6度の上下行や短6度の下行は時として、かなり大きな跳躍感を感じさせるので、使用に注意しなければならない。そうした時に起こる旋律の動きは、その自然な流れが阻害されるため、「硬い動き」と表現される。また、大きな跳躍を使用した場合は、方向を変える(6度の上行の場合は、その後は下行をするなど)のがよいし、大きな跳躍の後は、順次進行(の下行)がよい。

5)分散和音的進行も避ける。(伴奏のような動きになってしまう)

6)同じ音の多用や同じ音形の反復(ゼクエンツ)も避ける。(同形反復:主題のようになる)

7)無理な跳躍、不自然な進行はしない。当然、跳躍ばかりの使用もさけるべきである。

   [譜例6]

注[2] 「旋法対位法」はバッハ以前の対位法技術で、筆者は「パレストリーナ様式」として、すでにマニュアルを用意しているので、そちらを参考にしてもらいたい

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