第3種 掛留
*通常の「対位法」では、「第3種」には「1:4」が置かれるが、「1:2」の特徴を持つことや、「1:1」が2分音符分ずれた形になっているとも言えるこの対位法は、ここに置いたほうがよいと考えた。
掛留音(SYNKOPE)を対応(対位)させて、効果的音楽をつくることができる。全音符(CF)対タイで繋がれた2つの2分音符(CP)を対応させる。ここではじめて、強拍において不協和を形成させることができる。
1)掛留は、予備(かならず協和)、掛留音(不協和、時として協和)、解決(協和)からなる。その場合、弱拍で呼びされ、次の強拍で掛留を行い、それは2度下行して弱拍で解決という構造からなる。
このモデルを表記すると以下のようになる。(上声にある例と下声にある例を示している)
[譜例14]
2)予備音は必ず協和でなければならない。掛留音は協和でも不協和でもよいが、本来の掛留の意味からは、不協和にするのがよい。協和にした場合は、上行(順次進行、跳躍進行)が可能になるため、方向を変える(2度下行以外の進行をする)のに良い方法となる。
3)解決は必ず、2度下行する。
4)協和の掛留を使う場合、強拍にも同度(1度)が使用できる。(1:2で行われたように弱拍では同度が可能である)
[譜例15]
5)解決は必ず弱拍で行う。これは今後、「1:自由」になっても考慮されるべきものである。
6)解決は、不完全協和音程(3度、6度)によってもたらされることが望ましい。つまり、掛留音(不協和音程)は上声にあっては7度か4度(それぞれ6度、3度に解決)、下声にあっては2度か9度(3度、10度に解決)によって形成される。
7)2つの声部が増4度(トリトヌス、+4と表示)になる時、旋律線にトリトンが聞こえるので避けるべきであるということが書かれている理論書があるが、独立した2つの声部では横の旋律の流れがはっきりしていれば、問題にならないだろう。
8)減5度(5にスラッシュで表示)も使用できる。
9)対位が上声にあって、9度あるいは2度から同度(オクターブあるいは完全1度)に解決することはできない。同様に対位が下声にあって7度から同度(あるいはその複音程)に解決できない。
10)4度から完全5度に解決は使用できるが、解決感や掛留効果は薄いので多用は避けたほうがいいだろう。
11)間接の連続5度は、強拍においては使用されるが、弱拍では使用できない。
間接の連続は、掛留のズレを本来の音程に戻す、すなわち掛留音を強拍に移動することで、本来の音程が直接連続になっていることが分かるだろう。
12)時として、掛留を中断して第二種1:2を混用する事が許される。しかし、可能な限りはやく掛留にもどすべきである。掛留を連続して使うことで、必然的に対位が上声では4−3や7−6、下声では2−3という同じ音程が反復されることになるが掛留の練習のためなので問題ない。
<演習4>以上のことに注意して、CFを用いていくつかの掛留を用いた対位を試みよ。
以下に実施例を挙げておく。