《2声対位法》
【2声部の進行】
2つの独立した旋律が、それぞれの旋律が個性を持ちながら、調和をとって形成される音楽に使われる対位法の技術は、2つの旋律の関係において、いくつか注意しなければならないことがある。
2つの声部が進行する場合、
◯2つの声部が同じ方向に進行することを「並(進)行」と呼ぶ。
◯2つの声部が反対方向に行くことを「反(進)行」、
◯どちらかの声部が留まることを「斜(進)行」と呼ぶ。
◯2つの声部が同時に保留される場合は、「進行」とは言われない。
[譜例7]
1)同じ音程を長く(3回以上)連続して用いない。
1)同じ音程を長く(3回以上)連続して用いない。
[譜例8]
◯連続1度、5度、8度(平行)、これには、直接的なものと間接的なものがある。
間接的な連続については、それが考慮される1:2以上で、説明する。
◯並達1度、5度、8度(隠伏)は外声(2声の場合は2つの声部)で禁ぜられる。連続、並達に関しての詳細は、「1:1」の項で説明する。
【和声】
2つの声部は、その動き方によって、響きを作り出し、更に和音をも形成するようになる。和音を連続的に使用することで、「和声」ができる。
和声は、いわゆる「機能和声」の進行に大枠で従いながら、場合によっては、機能的進行でない場合も、旋律の進行の必然性から、時として逸脱することも妨げない。旋律の自然な流れがより重要である。ただし、
1)1つの小節においては、1つの和音を想定するのがよいが、旋律の流れから必要に応じて、2つの和音になってしまうことも可能ではあるが、多用は避けるべきである。
2)和音は、基本位置、および第1転回位置のみを用い、第2転回位置を用いることはできないが、終始に際して、Iの和音の第2転回位置+属和(7)音による終止も許容される。
3)一つの課題は同一調性内で行うが、長い課題では転調が可能である。
4)開始音と終止音はその調のトニカの基本位置でおこなう。すなわち、最低声部(2声では下の声部)は主音ではじまり、主音で終わる。また、その他の声部(2声では上の声部)は、ド、ミ、ソのどれかで始まり、それで終止するが、最上声部(2声では上の声部)も主音で終わることで終止感がはっきりする。2声の場合、音程で言えば開始は、1度、8度、5度、また3度も用い得るが、終止において、どうしても避けられない場合は5度の終止も可能である。【定旋律】 Cantus Firmus(以下CFと表記)
これから演習(実習)を行いつつ、この理論を理解していく。そのために、一定の旋律が課題として用意される。同じ旋律にいかに多様な対位を作れるかが重要な演習となる。そのために用意される旋律を「定旋律」と呼ぶ。定旋律は以下にいくつか用意しているが自分で作成しても良い。
自身で作成する場合注意すべきことを以下に挙げる:
1)既述の「旋律線」で述べられたことを考慮しつつ、音楽的流れ、起伏を考えて作られなければならない。
2)声楽を基本とする、つまり人が歌うことを前提に考えなければならない。
3)できるだけ音階の音を均等に使い、特定の音が多く使われることは避けるべき。
4)更に、一つの旋律は、あまり広い音域を与えない。せいぜい10度から最大12度(オクターブと5度)ぐらいまでにおさめるのがよい。
5)基本的には休符は含まず、あまり長いものは勧められない。8音〜12音ぐらいがいいだろう。
6)定旋律は用いられる声部の声域に合わせて、オクターブ(場合によってはそれ以上)の移高(音の高さを変える、Transposition)したり、様々な調で行うのがよいが、初期の段階では、ハ長調C-durあるいはイ短調a-mollで行い、それらで対位法の十分な感覚を養った上で、他の調で行うことを勧める。他の調で行うことで、音域の違いやそれによって起こされる調感覚の違いなどを理解することができるであろう。また、必要に応じて、ハ音記号による表現にも慣れておくのがよいだろう。
[譜例9]
<演習1>これまでの内容を組み込んだ定旋律CFを自分でも作成してみよう。